Birdie『世の中で悪用されている心理テクニック』①

 私淑するBiride氏が本を出したと知りすぐさま買いに。

 初めてこのタイトルを目にしたとき、率直にこう思いました。ついにBirdie氏も、胡散臭いビジネス心理学の本を出すようになってしまったのかと。出版社もビジネス書とか自己啓発書で有名なフォレスト出版だし。まあ生活かかっているからなあ、Birdie氏クラスでもマジシャンはいろいろ苦しいのかなあ、なんて思っていました。

 しかし読めばわかりますが、これはそんなチャチな本じゃあ断じてありません。いやいや、濃い。スゲー濃い本です。しっかりとビジネス書の体裁を取り繕っていますが、これはビジネス書の皮を被った、れっきとした催眠術の本です。そして、これまでのいかがわしい催眠術というもののイメージを脱構築していく本でもあります。催眠術そのものは全く知らなくてもそれなりに楽しく読むことができますが、おそらくある程度は催眠術というものに興味のある方に向けて書かれている本じゃないかと思います。

 Birdie氏のことを知っているマニアは喜んで買うでしょうが、少しでも催眠術に興味があれば買って読んでみることをおすすめします。僕の好きなまた別のマジシャン(もちろんDaiGoじゃないですよ)が俗流心理学の域を出ない、しょうもないビジネス書をいくつも出しているのにはガッカリしているのですが、こちらはさすがBirdie氏といったところ。ファンサービス旺盛です。むしろこれだけ催眠術に関することばかり書いていると、ビジネス書としての採算を考えて書いているのだろうかと心配になります。

 『Hypnotism Bend』シリーズ以上に、率直かつ誠実な語り口の催眠術レクチャーを未だかつて僕は観たことがありませんが、本書でもそうした語り口は健在です。Birdie氏がふだん何を考えて催眠術をかけているのか、催眠術についてどのように考えているのかについて、自らの経験に基づき書いてあります。

 もちろんこの本を読んですぐに催眠術を使えるようになるかと言われれば、ちょっと難しいところもあります。催眠術に全く触れたことのない方が、ベラベラと口からデマカセを喋ったり、誘導したりするにはちょっとだけ練習が必要なので。とはいえ、この本の『30秒カタレプシー』のスクリプトをそのまま使って練習していれば、本当に読んだ通りの催眠術が掛けられるようになることは確かです。しっかり観客を選びながら本番を繰り返し続けていれば、そのうち掛かる人が必ず出てきます。たかだか千円ちょっとでカタレプシーが身につけられる、ビックリするくらいお得な本です。

 何気に『好き好き催眠』も特典になっていて、そっちはまだダウンロードしていないのでわからないのですが、おそらくBirdie氏のことなのでいい加減なことは書いてないはずです。

 もちろん催眠術をパフォーマンスとして既に実践している人間にとっても本当にヒントの塊のような本です。少なくとも『Hypnotism Bend』を繰り返し観て、独学で催眠術を身につけようとしている方は、この本を読んだら飛び上がって喜ぶんじゃないでしょうか。巷の催眠術師があえて喋らないようなことをはっきりと書いていますから。

 催眠術愛好家がお互いに催眠術を掛けあうだけのジメジメとした陰気な世界でファンタジーを目指すのではなく、実践本意のパフォーマンスで観客を楽しませられる催眠術はどこまで可能なのか、それを問い続けたBirdie氏だからこそ書けた本だと思います。

 超能力とオカルトについて語るBirdie氏の姿は小川心平さんとカブりますね。