ブライアン・イングリス『トランス 心の神秘を探る』

 ブライアン・イングリスの『トランス 心の神秘を探る』という本を読んでいたら、こんな記述があった。

 ベルトはまた、自分が人を転倒させる場面をジボットーに見せている。道路を歩いている人の後を、その人の歩き方を真似ながらついて行き、ベルトの表現では、その人を"襲う"のだという。これをジボットーは、相手に知られることなく、その人物に催眠をかけるベルトなりの説明だとしている。「それから、相手の二、三歩前に、通せんぼするように道路に紐が渡されている場面をイメージしてください。その架空の紐に相手が触れた瞬間、自分がわざとよろけるんです。そうすると相手は、お気の毒ですが、どうしても倒れてしまうわけです」。

 

ブライアン・イングリス『トランス 心の神秘を探る』

  いつだったか忘れたけどテレビの『人間観察バラエティ モニタリング』で「前を歩く人が透明な壁にぶつかったら」という企画をやっていたのを思い出した。仕掛人数名が一般人の前を歩き、突然見えない壁にぶつかって立ち止まる、というドッキリだ。あれを思い出した。結構おもしろおかしく編集されていたけれど、いま思えばあれは紛れもなく一種の催眠現象だった。

 たいていの人はそのまま様子を探って歩き出すのだが、仕掛人が見えない壁を迂回すると、そのまま同じように後を尾いて行ってわざわざ迂回したり、人によってはUターンをするという結果もあった。つまり結果的に彼らは、そこに壁があるかのように"振る舞った"("認識した"ではない)ということだ。また、壁にぶつかった瞬間を目視していなかった方は、立ち止まることさえしなかった。これらは催眠というものについて、様々なことを示唆しているように思える。

 全体的にやや硬質な文章で読みづらい。トランスというものの歴史や、その周辺の話が延々と続く。実用的な内容はほとんどないので、特にオススメはしないが、読み物としてはとても興味深い本ではある。